FBで反響があった記事をBlogでも公開します。
ご一読いただけましたら幸いです。


●「女性が輝く日本をつくるための政策」とは、果たして「成長戦略」なのか?

6月27日、ある海外のTV番組から取材を受けました。安倍政権が掲げる女性活躍推進政策について、意見を求められたのです。
プロデューサーに「ところでなんで私への取材なんですか?」と尋ねると、「ワークライフバランスや女性問題でネットで検索すると、多数の講演歴が出てきたからです」と言われました。
確かにこの20数年間、たくさんの講演のオファーがありました。現在は大田区の中小企業研究者としてのイメージが強いのですが、20数年前、均等法一期生世代とともに地域のワーキングマザーのグループを立ち上げたことが、地域活動に入っていった私の原点です。

撮影クルー20140627


安倍政権が経済再生に向けて展開している「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「成長戦略」の「3本の矢」。
その3本目の矢である、持続的な日本の経済成長につなげるための「成長戦略」の中に、「女性が輝く日本をつくるための政策」が含まれています。
その中に「待機児童の解消」「職場復帰・再就職の支援」「女性役員・管理職の増加」があります。

しかし、「女性が輝く日本をつくるための政策」とは、果たして「成長戦略」にカテゴライズされるものなのでしょうか?
私はまずここに非常に違和感を覚えます。

●真の「ワークライフバランス」とは?

私は5月に自分の病気が発見されて以来、仕事時間を大幅にセーブしてきました。
リハビリのためにプールに通っている日は16時に会社を上がっています。
また、この2ヶ月間、夜間の打ち合わせや会議はすべてキャンセルさせていただきました。

この1ヶ月あまりで自分の体重は7kg落ちましたが、同じように日々の生活の中での贅肉をことごとく減らしていきました。
限られた時間内での労働生産性を上げることに腐心した結果、上半期3ヶ月間の売上は、ここ3年間で一番良い数字を達成することができました。
これには顧客が弊社を信頼して任せていただける状況やスタッフの理解と協力なくしては達成できませんでした。

そして現在は遅くとも18:00には自宅に戻り、家族とのコミュニケーションをたっぷり取れるようになりました。
また、健康的な生活へ目標を定めた結果、超夜型でほとんど睡眠時間をとらなかった生活から、早寝早起きに生活習慣をガラリと変えました。
その結果、朝早く起きて読書をし、ラジオ英会話を聞きます。その後、ゆっくりとお弁当作り。これは現在、厳しい食事制限があるため、外食があまりできないからなのですが…。
今の私は、肉体的な面だけを見ると「かなり大変な状況」なのですが、精神的な面から見ると、とても充実しています。
生活を楽しむ余裕ができたからです。これが本当の「ワークライフバランス」ではないか、と思っています。

仕事と家庭の両立という狭いカテゴリの視野では得られなかった満足感です。

●ライフステージ毎の生き方の変化対応を

女性が継続的に活躍するためには「瞬間的な活躍」を支援する政策だけではダメなのです。
長い人生の中には、結婚、出産、育児、介護、そして私のように自らの病気も入ってくる可能性もあります。
そのそれぞれのライフステージをどう生き生きと過ごすことができるか。
確かに振り返ると育児期の仕事との両立は大変でした。
しかしそれでも思い出すのは、息子の少年野球の楽しい思い出ばかりだったりします。
試合のこと、お祭りでのチーム参加のこと、BBQへ行ったことなど日々の生活のささやかな一コマの中にたくさんの楽しさ、嬉しさを発見することができます。

また、私は「仕事と家庭の両立」として長い間、テレワークで補完してきました。それは1996年頃から現在に至るまでずっとです。
しかし、結局は家庭に仕事をシフトして持ち込むことになります。
そして知らず知らずのうちに長時間労働になっていきます。
24時間、365日、どこでも連絡がとれてしまうことで、己の首を真綿で絞めていくようなものです。
男性と同等、またはそれ以上の時間で働くことは家庭責任の大半を担っている女性にとっては、完全にオーバーワークです。
その結果、私のように体調を著しく崩してしまいます。 私は自分の踏んだ轍を、働く女性たちに反面教師としていただければ、と心底思います。
今、本当に考えるべきことは労働の質を高めて「時短」を実現することではないでしょうか。
そしてそれぞれのライフステージ毎に柔軟に生き方を変えていけること。変化対応への周囲の理解と協力も必要です。


●実現可能な数値目標を掲げることが重要

そしてやはり数値目標をもつことは必須だと思います。例えば北欧のクォータ制。クォータ(quota)とは、「割り当て、分配、分け前」の意味です。もともとは政治における男女間格差を是正するための暫定的な方策で、議員・閣僚などの一定枠を両ジェンダーに割り当てる制度です。発祥地のノルウェーでは、一般企業に対してもこれを法制化しました。その結果、取締役会など経営中枢への女性進出に大きな効果を上げています。

これも安倍政権以前から政策方針として検討されているひとつではあります。
しかし、それをいつまでに具体的にいくつまで数字を引き上げるか?
その具体的な目標設定が必要です。3年後に20%、たとえばそれでもいいのです。より実現可能な数字であれば。

たとえば大田区には区長、副区長がいますが全員男性です。その中にせめてひとり副区長に女性を任命して欲しい。
副市区町村長は市区町村長が指名し、市区町村議会の同意を得て選任されます。
このため、長と議会の多数派が対立している場合、長が任命できない事態も起こり得ます。

「前例がないから」。

これでは地域からイノベーションは起こせません。イノベーションは足元から起こせるものなのです。


先日の取材を受けて、今感じていることを少しだけ書かせていただきました。長文をご高覧いただいた皆様、ありがとうございました。

奥山 拝