本日、大田区立池上会館で上映された「日本と原発」を観に行った。
*公式サイトはこちら→http://www.nihontogenpatsu.com/

弁護士河合弘之氏、海渡雄一氏、脱原発株主運動訴訟を闘う木村結氏の3人が、原発の関係者、有識者にインタビューを行い、現地での情報収集や報道資料等を基に原発事故を引き起こした背景、規制基準、エネルギー政策の実態、被災に苦しむ現地の方たちの姿を捉えたドキュメンタリー映画だ。

この映画は、扇情的に働きかけるものではなく、きわめてわかりやすい原発問題総集編だと思う。
的確な映像の引用や図表、明確な出所の資料、「こんな感じ」というふわっとした感情論ではない現実的な脱原発の具体策を提示している。

そして科学や経済等のエビデンスをもとに語る有識者へのインタビューにより、原発問題を様々な角度から語っていく。思想信条ではなくファクトにこだわり、原発への問題提起を網羅している点が秀逸だと思う。

目からウロコだったのは、原発を建てる自治体には「電源三法」という法律に基づいて、交付金が支払われている、ということ。
*詳細は、一般財団法人電源地域振興センターの「電源立地制度の概要」参照→https://www2.dengen.or.jp/html/leaf/seido/seido.html

その意味とはこうだ。
「源開発促進税法・特別会計に関する法律(旧電源開発促進対策特別会計法)・発電用施設周辺地域整備法の総称。昭和49年(1974)制定。電気料金の一部として徴収される電源開発促進税を財源として、発電施設が立地する市町村に対して、電源立地地域対策交付金として還元する制度。公共施設の整備や地域振興事業を支援することによって、発電施設の設置促進および運転の円滑化を図ることが目的。」(出典:デジタル大辞林)

原発からの収入が自治体の歳入を支え、中には町の歳入の40%近くを占めるところすらある。
運転年数とともに交付金の額が減少するため、次の原発を建てるところも増える。これによって原発や関連施設が一箇所に集中していく構造になっていく。中には地元雇用者の8割をも生み出し、雇用も財政も地域まるごと原発マネーに組み込まれていく。
ちなみに、日本一交付金が多い地域は、島根県の松江町で57億を超える。

地域が本当の意味で再生するには、地域の自立・自律という視点が欠かせない。
原発に「NO!」と言うからには、その代替案がきちんと提示できることが大切だ。
そのための新しいエネルギー政策への地方からの取り組みの紹介は、一条の光を見出すことができる。

ちなみにエンディングには、新垣隆氏のオリジナル交響曲が流れる。こちらも聴き応え十分だったことをお伝えしておきたい。

日本と原発